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頼りある便りを心がけたい。

 ご無沙汰しております。AAの永岡です。

 明日からはもう8月ですが、まだまだ暑い日が続きそうですね。
 さて、そんな暑気を少しでも和らげることができるように、初夏に遡ったお話しをしたいと思います。
 「和泉式部日記」をご存じの方は多いと思います。そのなかで、為尊新王の死後。弟の敦道親王が思いを寄せる和泉式部に「橘の花」を贈るシーンがあります。その「橘の花」は、古今和歌集や伊勢物語に詠まれている「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」という歌を想定して選ばれています。いったい昔の人はどうしてここまでひき出しを拡げて物語を描けるのかしらと感嘆するばかりですが、今回敦道親王がかけたこの技に似るものが受験においても実践できるような気もしてまいりました。
例えば英文読解においてsoやbutなどの記号を探すのはどうしてでしょうか。その後の内容を瞬時に予測するためですね。では社会の勉強に用語集や地図帳が必要なのは?授業外の内容を狙われた時に対応できるようひき出しを豊かにするためですね。また、各教科において問題文にもこういったsignに鋭敏であった方がいいでしょう。その点敦道は分野こそ受験ではなく和歌ではありますが、「相手の気持ちを読み取り適切に返答(返歌)する」プロフェッショナルと言えるでしょう。それは掛詞や序詞といった些末な文法事項よりももっと核心的な部分、具体的に言うならば「(和泉式部が兄の為尊親王を愛していたことを知っていたから)故人の意を添える橘の花を贈る」という行為から分かります。敦道が和泉のハンター7であるならば私たちは出題者のハンター。background(語彙・文法、基礎知識)だけでなく、その時々の心情(→条件付け、文意)を汲み取る必要があるのではないでしょうか。
 ちなみに敦道親王は和泉を引き寄せることを遂行するまでに、文(ふみ)の便りのなかで和泉と贈答、返歌を連綿と繰り返します。
しかしここは注意しなければならない。入試本番、解答時間と試験会場の決めれた私たちには、「橘の香」に酔いながら問題を解く時間も環境もありません…。
この辺りで繰り返される文に区切りをつけるならば、「紙面に広げられた無数のメッセージの森において、必要な産物を得つつもいかに素早くそこを抜け出し目的地に到着できるか。」という問いをしたためたい。
 さて、最終的に問いを皆さんに残すという筋書きになってしまいました。和泉式部に親交のあった清少納言に「いとにくし。」と謗られる気がしてなりません(笑)。どうやら仮に謗られても支えてくれるような友人に対しては、区切りおつけるどころか始終「便り」を絶やさないほうがよさそうですね。涼しげな朝顔も姿を隠すこの暑い夏、いったい何を贈答すればよいのやら…。

 では、また。








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